開催報告書『東日本大震災復興祈念アートタイル壁画展~KIZUNA~』

2022 7/27

【主催挨拶】

2022 年5月21日(土)に、岩手県陸前高田市にて『東日本大震災復興祈念アートタイル壁画展~KIZUNA~』の除幕式を開催致しました。本展覧会は、「絆」をテーマとして、現代日本芸術、シンガポール芸術、地域学生のアート作品をアートタイル壁画として、陸前高田市コミュニティホールの壁面に展示いたしました。

除幕式には、素晴らしい作品をご発表いただきましたアーティストの皆様をはじめ、陸前高田市市長 戸羽太様、前文部科学副大臣 高橋ひなこ様、東京都足立区議会議員 長沢興祐様、陸前高田企画株式会社代表取締役 村上清様、駐日シンガポール共和国大使館関係者、地元住民の方々やメディア関係の方など多くの皆様に御来場いただき、盛況のうち無事終了することができました。厚く御礼申し上げます。

今回のアートタイル壁画は、日本で初開催ということもあり、総勢207名のアーティストにご賛同いただき、それぞれの思いや独自の技法を踏まえた魅力ある作品を発信することができました。

また、会場については、東日本大震災後にあらたな地域住民の交流の場として建設された陸前高田市コミュニティホールの外壁を使用させていただき、今後の復興のシンボルとして、そして震災の記憶と教訓を伝承することを願うとともに、多くの方にアートに触れていただく機会となりました。

さて、このたび、開催概要や、来場者の皆様の反応などを内容とする報告書を取りまとめました。私どもといたしましては、今回の成果や課題を活かしながら、日本芸術を発信し、伝統文化を後世に繋げてまいりたいと考えております。

最後になりますが、御来場いただきました皆様をはじめ、出品してくださったアーティストの皆様、開催に当たり御支援、御協力いただきましたすべての皆様に心より感謝申し上げます。

2022 年 6 月 

国際芸術交流協会

『東日本大震災復興祈念アートタイル壁画展~KIZUNA~』

2011年3月11日――。未曽有の大災害が東日本を襲い、変わり果てた姿に言葉を失いました。

忘れられない記憶、忘れてはいけない事実、そして復興への道のり。

東日本大震災発生から10年余りが経過し、数々の復興事業が行われてきた今、芸術に携わってきた私たちにできることはないだろうか。

芸術作品を通して、被災された方々に癒しや温もりを伝えること、これこそ弊社にできることと自負しております。そこで、2022年5月21日、国際総合芸術交流協会主催のもと、岩手県の陸前高田市コミュニティホールにて、『東日本大震災復興祈念アートタイル壁画展~KIZUNA~』を開催する運びとなりました。

――東日本大震災の津波と復興を伝える街・陸前高田市――

陸前高田市は、三陸海岸の南部に位置し、かつては350年にわたって植林されてきた約7万本の松の木が茂り、日本百景にも指定された景勝地でした。東日本大震災では、巨大津波によって街全体が浸水し、市役所を始めとする沿岸部の商業地域や住居、風光明媚で穏やかな観光地を彩っていた松の木のほとんどが流されてしまいました。

7万本を失った高田松原は、一歩一歩白砂青松の復活に向けて再生の道を歩んでいます。砂浜も再生し、2021年4月には一般開放され、7月に海水浴場としてオープンしました。また、地上7階建ての新市庁舎が高田小学校跡地に建設され、5月6日に開庁しました。震災から10年、ようやく行政の新たな拠点が完成。どのような苦境に立たされても、歩み続ける陸前高田市。決して折れることのない心に、癒しや温もりが伝わるように願いをこめて、この地にアートタイル壁画を展示いたします。

【開催概要】

■名称:東日本大震災復興祈念アートタイル壁画展~KIZUNA~

■日時:2022年5月21日(土)

■会場:陸前高田市コミュニティホール

    岩手県陸前高田市高田町栃ヶ沢210番地3

■主催:国際総合芸術交流協会

International Association of General Art[IAGA]

『東日本大震災復興祈念アートタイル壁画展~KIZUNA~』実行委員会

■実行委員会:実行委員長 美術評論家 長谷川栄先生

       実行委員  心理カウンセラー 清田予紀先生

株式会社20G代表取締役 笠原善友

■企画・運営:株式会社20G

■後援・協力:陸前高田市

駐日シンガポール共和国大使館

芸術新潮

陸前高田企画株式会社

ティ・シィ・アイ・ジャパン株式会社

株式会社サカエ・ライト

株式会社モンスターズ

芸術にこめた復興の絆

『東日本大震災復興祈念アータイル壁画展~KIZUNA~』再起の象徴として、震災の記憶と教訓を伝承

昨年より続く新型コロナウイルスの蔓延により自粛ムードが大勢を占めるなか、開催時期の延期や中止をせざるを得ないのではといった意見が実行委員会の中でも出ておりました。しかし結果として、芸術の持つ力とは如何なるものか、あらためて考えるいい機会となりました。

芸術とは、いつの時代においても、老若男女問わず人々にやすらぎを与え、時には奮い立たせるものであると私たちは信じています。だからこそ、こういった時代においてもアートタイル展覧会を開催いたしました。

2011年3月11日、この日を境に何が変わったのでしょうか。陸前高田市の海岸線には松の木が生い茂り、平穏な生活を送るたくさんの家庭がありました。三陸海岸には漁船が浮かび、景勝地として知られ、大自然とともに、そこにはたしかな営みがあったのです。

しかし、いまここにあるものは、言葉にならないほど変わり果てた大地。テレビやインターネットを通して被害の大きさは知っているつもりでした。ただ、何もないということが、こんなにも悲しく、こんなにも虚しいものだと、だれが知っていたでしょうか。

あれから10年以上の月日が流れ、海岸沿いには盛土がされ、地域住民の方は高台で新たな営みを始めています。市庁舎も新しくなり、奇跡の一本松を復興のシンボルとして一歩ずつ着実に復興への道を歩んでいます。この10年の間に、国内外問わず様々な支援とともに新たな絆が生まれました。忘れてはいけない震災の記憶と教訓、そして、この日を境につながった新たな人々の想いとともに。

この想いを形に変え後世に伝承することを願い、アートタイル壁画が陸前高田市コミュニティホールの地で、2022年5月21日にお披露目となりました。全国より選抜されたアーティストによる作品がアートタイルとなり、この地の新たなる復興・絆の象徴として末永く愛され続けることを心より祈念しております。

2022521日(土)開催                 

晴天に恵まれた岩手県陸前高田市。当初の予定通り、10時30分より「東日本大震災復興祈念アートタイル壁画展~KIZUNA~」の除幕式が始まりました。

展示会場となる陸前高田市コミュニティホールには、お力添えいただいたアーティストの皆様、陸前高田市市長 戸羽太様、前文部科学副大臣 高橋ひなこ様、東京都足立区議会議員 長沢興祐様、陸前高田企画株式会社代表取締役 村上清様をはじめ、駐日シンガポール共和国大使館関係者、地元住民の方々やメディア関係の方などたくさんのご来場があり、あらかじめ準備された50脚の椅子では足りず、立ち見の方もいらっしゃいました。

式典は、本展覧会を主催している国際総合芸術交流協会の副理事長の挨拶から始まりました。続いて戸羽市長の挨拶にうつり、復興の道のりが語られました。

津波で奪われた多くの尊い命、跡形も残らない建物、そんな絶望のなか、支え続けてくれた国内外からの多大な支援に対する感謝の意。会場周辺の山は震災後に整備され、採掘された土を海岸沿いに運び盛り土を行ったことなど、絶望の淵からみんなで手を取り合ってここまできたこと。そして、戸羽市長の口から発せられた何よりも印象深く、重みのある一言。

「自分のいのちは自分で守ってください」

これだけ聞くと無責任な発言のように聞こえてしまうかもしれません。しかし、戸羽市長が伝えたかったことは、そうではありません。どれだけ対策を練っても、どれだけ緊急時に備えた措置を施しても、ときに自然は想定されることをはるかに上回る猛威を奮うものなのです。そのことを誰よりも分かっているからこそ、この言葉が出てきたのだと思います。冷たい一言のようで、だれよりも地域住民の方を強く思う気持ちが溢れた戸羽市長の言葉ではないでしょうか。

続いて、高橋ひなこ様より復興の思いや素晴らしいアート作品への感謝の言葉をいただきました。高橋様は除幕式後も、展示されている1枚1枚のアートタイルをじっくりご覧になられていたのがすごく印象的でした。それはまるで、アート作品にこめたひとりひとりのメッセージを感じ取るかのように、真剣かつ温かい眼差しを向けられていました。また、その場にいらっしゃったアーティストの先生方の声にも耳を傾け、芸術による人々の繋がりを実感していただけたようでした。

その後、長沢議員は陸前高田市の過去、現在、未来のことをお話しされました。岩手で生まれ育った長沢議員は、除幕式本番前、誰よりも早く会場に姿を現しました。そこでスタッフがなぜこんなに早くいらっしゃったのかと問うと、こんなことをおっしゃいました。

 「昨晩、就寝しようとすると外から何か聞こえませんでしたか?

静けさのなか、一本松の奥から聞こえる波の音。そのメロディーにあわせるかのように、

あちこちから響く蛙の鳴き声。故郷に帰るたびに必ず耳にする自然の癒しがこれなのです。

震災直後は、なぜか聞こえなくなっていた大自然の音。

正確に言うと、心を閉ざし、耳を閉ざしてしまい、聞こえなくなっていたのかもしれませんね。

そして、10年が経過し、元の姿とは言えないまでも、復興の道のりを着実に歩んできました。

そんななか、今回のアートタイル壁画展の開催。

この大自然に囲まれたなかで、ゆっくりと堪能したかったので、一足先に会場入りしました。

(幕のかかる前に独り占めしてご覧になりながら)

本当に素晴らしい作品ばかりで、温もりや、やすらぎが感じられるのはもちろんですが、

もっともっと頑張れる、そんな不思議な力をもらうことができました。

ご参加いただいた芸術家の皆様にあらためて感謝いたします。ありがとうございます。」

このようなことを笑顔でお話され、弊社スタッフも、あらためて芸術の力を実感することができました。

話は式典に戻りますが、陸前高田市・芸術文化協会会長を務める佐々木保伸様は、地域住民の憩いの場である今回の展示場所(陸前高田市コミュニティホール)が、アートタイルによって彩られたことで、さらなる絆を深める機会になるのではないでしょうか、と期待されておりました。また、陸前高田市がこの壁画をきっかけに、被災した町としてではなく、そこからたちあがった町として知っていただき、まさにそのシンボルにふさわしい芸術作品の集大成がお披露目になることを大変楽しみにされていたようです。

そして、陸前高田企画株式会社代表取締役 村上清様からは、駐日シンガポール共和国大使ピーター・タン・ハイ・チュアン様からいただいたメッセージを代読していただき、両国の友好の絆の象徴としてこの地に末永くアートタイルが展示されること、さらには、ご覧になられた方々に少しでも何かを感じていただければ、と願いを込められておりました。

ご来賓の方々からのお言葉のあと、いよいよアートタイル壁画のお披露目となります。

その瞬間を逃すものかと、岩手放送、東海新聞の記者を筆頭に報道機関各社のカメラが一斉にアートタイル壁画に向けられます。司会者のカウントダウンとともに幕が開くと、自然と拍手が湧きました。

会場内の視線はアートタイル壁画に釘付けになっています。正確に申し上げると、アートタイルに惹きこまれてしまっているようでした。

その後、ご来場されたアーティストの先生方に展示証明書の授与が行われました。

陸前高田市からの感謝の意を込めて、戸羽市長からひとりひとり手渡ししていただきました。

市の正式な捺印のされた展示証明書を発行していただけたのは、それだけ優れたお作品をお手掛けの先生方だからこそのことだと思います。あらためて深く感謝申し上げます。ありがとうございます。

最後にアートタイル壁画の前で集合写真の撮影を行い、大盛況のなか『東日本大震災復興祈念アートタイル壁画展~KIZUNA~』の除幕式を無事終えることができました。

【本展の名前にもある“KIZUNA=絆”】

除幕式が終わり、光に照らされたアートタイルとそこに集まった人々の優しい表情をみていると、ふとこの“絆”という言葉が頭に浮かび上がってきました。むしろ心で感じとったのかもしれません。

この日のために、魂のこもった芸術作品を提供してくださったアーティストの先生方はもちろんのこと、陸前高田市やシンガポールの方々、日常生活ではなかなか感じ取ることが難しい人と人とのつながり。震災から10年の歳月が流れるなかで、何万、何十万、それ以上の方々の支援があったと思います。そのひとりひとりとの繋がりこそが、今日そして未来へとつながる絆ではないでしょうか。

そして目ではみえないこの絆を、形あるアートタイルとして後世に遺すことができました。

――芸術の力で、みなさまに幸せな未来が訪れますように、少しでも復興の力になれますように。

今日目にしたこの光景こそが、絆そのものだと思います。

本企画にご賛同いただき素敵なお作品をご発表いただいた芸術家のみなさま、実行委員会の先生方、陸前高田市のみなさま、関係者のみなさま、そしてコロナ禍のなか足を運んでくださったみなさま。

この“絆”がスタッフひとりひとりの財産となりました。

関わっていただいた全ての方々に深く感謝申し上げます。誠にありがとうございました。

【取材・メディアの一例】

2022.05.22 読売新聞オンラインより抜粋(https://www.yomiuri.co.jp/local/iwate/news/20220521-OYTNT50173/

2022.05.23 岩手日報より抜粋(https://www.iwate-np.co.jp/article/2022/5/23/116423

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